深夜0時の鬼ごっこ
夜中にもなれば、賑やかな町も次第に眠りにつく。
外を出歩くものは少なく、街灯が空から零れ落ちた星のように道を照らしている。
光と闇の入り混じる道を、1つの影が歩いていた。
その影を物陰からじっと見つめる影は2つあった。
「あいつか?」
綴が隣にいる結音に小声で尋ねると、頷いて答えた。
「別に変ったところはなさそうだけどなぁ?」
「私もそう思うんだけど・・・。」
結音は言葉を最後まで言わずに、影を見失わないように足音を殺して跡をつけ始める。
綴も結音の手を握りしめて一緒に歩き出す。
2人に追いかけられてるとも知らない影は、石畳の様に舗装された道を淡々と歩き続ける。
昼間結音が見た予知夢。
それは、真夜中に1人の影が歌を歌っている光景だった。
「怖いとかそういうんじゃなかったから、悪い人じゃないと思う。」
「ってことは・・・。」
「たぶん・・・・・私と同じ『クセラ』だと思う。」
「なるほど。」
「でも、なんで夢に出てきたかが分かんないんだよね。」
「『クセラ』の能力を悪用してるとかじゃねーの?」
「うーん・・・。それとはちょっと違う感じがする。それだったらもっと怖い感じがするはずだし。」
「んじゃまぁ、そいつがどんな奴か確かめてみっか。」
真夜中まで「黒猫」で時間を潰した2人は、夢の中に出てきた場所でその人物を待ち伏せて、その時を待つことで真実を知ろうとしたのだ。
しかし、それらしき影はその場所で歌うことはなく、静かに歩き続けていた。
不意に、影は聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で鼻歌を歌いはじめた。
その途端、影の周りの空気が変わった。
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